ブラック企業化したマンガ業界?
最近はネットやブログで作家さんが直接意見を発信できるため、いろいろ揉め事が起こるけれど、
プロの世界を知っている人からすれば至極当然のことながら、
作家に付いたファンの方なんかからすると実際は作家本人の作品でないようなものを
ありがたがらされていた、という事実をついて騒がれることが多いようです。
ネットはきちんと商売にして、やった分報酬が戻るようにしなきゃいけないのに、
今は個人の主張の応酬だのはけ口だのということでビジネスとは程遠いところにいますが
マンガ家って実はなんなの?という話をすこし。
現実の話として、マンガ家が一所懸命書いた作品が毎週星の数ほど出てきますが、
片手で数えられる数名の大作家を除いて、ネームは編集者の都合で勝手に変えられたりすることが多いです。
出てみて、こんなせりふ言ったっけ?なんて事が起こっています。
そういうことをしない超有名雑誌の出版社もありますが、そういう場合はとにかく人格つぶしがひどくて、
ネームが一発で通ることなんてない。
大体締め切り2日前ぐらいまで逐一だめだしされて、4回、5回書き直しになり、捻じ曲げられていることが多い。
だからせりふ以前に、演出まですべて管理下に置かれてコントロールされている状況です。
ファンの方はそのフィルタリングでずたずたに変容したものを、読んでいるということ。
一回売れたら随分楽になりますが、新人の読みきり作品なんかで1Pに5列で1列に3コマ並んでいるとか、
絵が1cmくらいのスペースであとはやたらと長いせりふがギチギチに詰め込まれているとか、
作家の悲痛な叫びというか、断末魔のような窮屈な痛々しいマンガを見たら、
間違いなく発狂寸前まで書き直しされたものだと思えば自然です。
私も45Pを一晩で直し、それを3日おきに持ち込みなおす日が4ヶ月ほど続き、
やっと通してくれたのですが、編集会議でだめになったので、あきらめてやめました。
一回じゃなく、それぞれ別の出版社で二回です。よく3年余り、二回も我慢したなと(笑
普通の作家でも4回ぐらい自殺してるでしょうストレスを生きてきたわけ。
ひとつは編集さんが持ってきた釣りマンガの企画だったのですが。
つられたのはこちらだったというオチ(笑
あとはその後別の作家さんで売れたので、いろいろあるので言えませんが。
それまでにも峠の自動車(イニD前)モノ、トイレの花子さんとか怪談物、海洋冒険物、書道物、なんてものを
持ち込んではすべてNGになっておりまして。
今現在これら持ち込んだ企画が全部実現していたことをかんがみれば、需要はあったけど書くのが
私では役不足だった、という運命のようなものを感じざるを得ない。
要するに私はマンガ家になってはいけなくて、ほかになにか使命があるのだろうと。
いずれにせよ上記のようにもちこんでは一言一句をああだこうだと突っ込まれ、批判され、
要するにつまらないなら書き直すよ、といいたいのに離してもらえずネチネチと3,4時間
自作の悪口に延々耐えなければならない。
まさに晒し上げ。
新人は大体8割以上はこれで精神的におかしくなって、田舎の純朴な夢と理想に燃える若者なんかは
精神に異常を来たして都落ちします。
編集さんはそういうのを、ああ、またつぶれちゃったね、かわりかわり、とベルトコンベア式に
流していくのが、新人を鍛えるときの通例になっておりまして、
パワハラといえばすさまじいパワハラです。
かつては原稿を灰皿代わりにされたりもしたのですが。
つーわけで自分の書いたものをクソミソに言われてたたかれて、
簡単にヒステリを起こすような人はやめたほうがいいわけ。
ネットでいくら作品の悪口を言われようが私が気にならないのはこういうわけです。
心臓とメンタルの鍛えられ方が違うので。足掛け6年ぐらいも鍛えられています。
だからなんでも通るようになったエロマンガは本当にたのしかったのですが
今度は男優の仕事でまったく時間が取れなくて、プロットがちゃんと作れないことがおおかった。
そういうわけで今盆栽マンガのように進めてる個人作がありますが、これは終わるとつまらないので
終わらないようにするかもしれない。
さかきいずみ名義で書いたスカトロものとか、ちんこじる娘のある一話のみが
やたらと印象に残るのは、時間があった時にかけたやつだからです。
それはともあれ、20才前後の新人作家というのは当たり前ですが世の中知りませんから、
青臭いどうしようもない作品を書いてくることがほぼ100%。
同人誌などで仲間内で批判のないよう生きてきているから、
面白い、というほうが間違ってる。
専門学校系のものとなると、本当に焚き火の燃料にしたほうがいいようなものが多くて、
自分から見てもあああああああとなってしまうものがある。
そうなると、第三者の目からみた視点で、編集者が調教するのはこれは
むしろやらないといけない。
それをやめたら、本当に日本のマンガはオナニーマンガになってしまい、衰退してしまうでしょう。
ディズニーがリメイクしたくなるようなキャラクターなんか逆立ちしても作れなくなってしまう。
そういうわけで、ある程度こういうパワハラの批判と矯正、は新人にはあったほうがいい。
なぜかというと、ネットではすでにご存知でしょうが編集者は少なくとも自分を買ってくれている愛の鞭で、
メシおごって慰めてくれたりとか、いちおうする。
それを買わされたお客さんの怒りというのはもはやとめようがなく、
お客さんの駄作に対する怒りとかストレス、とかは、本当に血も涙もなく
刺されて殺されるクラスの言葉が矢の雨となって飛んできます。
私がミルキー作品を出すときに、あまりリクエストに盲従したり、おもねったりしないのは、
そういう駄作にしたくないからです。
ただし、すでに連載をしている作家さんのネームを変えるとか、思い通りになるまでネームにNGを出して
書く時間が2晩しかないとか、それでいて売れないとなると、これはパワハラになってもおかしくない。
いろんな編集の人がいますが、音楽のプロデューサーのようなものだと思って、
作家の作品を演出するのだ!といきまいている人がおうおうにしてこうなる。
ロックアルバムのプロデューサーは音楽家が依頼するもので、
頼んでもいないのに、いやむしろ書いてくれとあちらから頼んでおいて、会社から送り込まれた編集という人が、
俺はあんたのパートナーだから、と書いたものを好き勝手気に入らんと捻じ曲げる、
ということが常態化しているのはちょっと違う。
それで売れないとか、何の冗談かと。
作家にしてもバカじゃないから面白くなければ書き直す。
自分から書き直し続けて、ストレスで参ってしまう人が多いのはそのためで、
ヒットを出しているような方なら任せたほうがいいのに、相変わらずズカズカと作品を共作気分で
好き勝手に弄繰り回す、というのがある。
依頼者なのか顧客なのかよくわからない。
これをいわゆる、白いワニ、といったのです。
ほとんどの作家はアメリカに対する日本みたいなもので、
デビューのときから完全に取り込まれてしまっているから、私のように
それはむしろ当たり前で作家は編集の注文にヒットするかどうかは関係なくあわせる。
ヒットすれば運がいい、ヒットしなければ自分の才能がない
もし可能なら、彼らが企画を持ち込んで肉付けする、というほうにしてくれればいいなああ
そのように割り切らないと、とてもじゃないが続けられる稼業ではないのですわ。
漫画家、というと聞こえはいいですが、実際注文どおりにモノを仕上げて、気に入られなければ
顧客(メーカーの担当者)が”個人的に”満足するまで何回も作り直す、下請け部品工場の親父みたいなもので
何年かに一回町工場のひとつの特許がまかり間違って大企業並になったりする
そういうもんだと思っておけばいい。
だから、漫画家は売り上げが10億あろうが100億あろうが、どこまで言っても中小企業で
野球選手とかタレントみたいなものなのです。
次代に受け継ぐ”企業”とはまったく違う。
もし漫画家になりたいという人がいたら、
一代限りのアーティストになりたいのか、ヒット商品を紡いでいく企業経営者になりたいのか、
最初にはっきりさせたほうがいいでしょう。
いくら売れても一代限り、なら、田舎に記念館でも作るのがいいところでしょう。
だから、私は企業とアーティストの合体なら、和菓子屋なんかが一番いいのじゃないかと
思っています。
赤福とかとらやとか、生き残るのは大変ですが生き残ってしまえば、同じことをむしろ
かたくなに守って保存していくのが仕事になる。
歌舞伎もそうですな。
漫画家になるとはどういうことか、をわかった上で結局何が残るのよ?と
イメージできるくらいの想像力がないと、あの仕事は厳しい。
玄関の前に滴るいつもと違う水のしみから、大きなストーリーが瞬間的に想像できて当たり前。
その思いつきレベルのストーリーでさえ、みんながぐいぐいと引き込まれるキャラクターを作れてプロ。
その条件を満たした人の中から時代にあったキャラクターを商品化できたら大作家。
最初にそういうイメージが出来ていたら、なれると思います。
雁屋哲先生がおいしんぼの挿入コラムで、その後の桃太郎、という話を
思いつきでづらづらと書きなぐっていたけれど、本当にいろんなイマジネーションが
沸いてくるすごい”作品”だった
売れる人っていうのは、こういうそもそも才能がある神童の中にあって、さらに能力以上の何かがある。
こういうすごさは普通の人にはわからないから、これをすっ飛ばして
自分の意見をブログやツイッターで安易に吐き出してしまうと、
もめてしまうわけです。
それだけの覚悟が出来て、まだ漫画家になりたいなら、キャラクターに注目すべきでしょう。
編集も朝から晩までキャラクターと繰り返します。
これは何か。ということをまた次回。
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